ここはあなたからほどとおいくに

 寂しいと言いたいけど言わないのは一人でいることを愛してこその二人だと思うからだよ。

 超・絶・鬱! な状態をなんとか抜け出したつもり、会いたくて一人でウワーッてなってたけどもうやめたやめた。言ってもどうにもならんものはならん。絶望と孤独に加えて関係ないひとへの羨ましさまでもが交錯して暗いねちねちした文章を深夜までかけてずらっずら書いてたけどもう全部消したよ、そもそもそーいう柄じゃなかったことに気づいたよ、それに BONNIE PINK さんの「Quiet Life」にわたしの言いたいことが全部かいてあってひどく拍子抜けしたのだ。わたしが書かなくたって他のひとがもっと上手に書いてるじゃん。ね。その程度ですよわたしなんて。
 一人でいることをちゃんと楽しめるようになりたいんだよ、大好きだった本を漫画を音楽を綺麗な靴や化粧品を、紅茶の湯気を眺める時間を、だれにも邪魔されずに文章を書く喜びを、思い出せ。「気を紛らすため」とかじゃなくて正攻法でやるんだよ。四六時中一緒にいられるわけではないことを考えれば、今夜離れて眠るその程度のこと、贅沢でかわいい不幸でしょう。一人でいることが好きだったわたしならできるでしょうが。
 それでもどうしても寂しいときは、白い熊を抱いて眠りへと逃げるんだ。

 *

 ここはあなたからとても遠い国
 決してあなたの顔に触れることはできない
 ここは幸せからほど遠い国
 私もそうよ どこへ行ったって
 きれいな景色 入れたてのコーヒー
 (Quiet Life / BONNIE PINK 対訳より)

「あなたから遠い国」だからイコール暗くて寂しい、ではなくて、「きれいな景色 入れたてのコーヒー」というのがいい。会いたい人が不在でも世界は変わらずにやさしい、そのことがかえってひどく寂しい。